[寄稿文] 人がテーマを、テーマが人を創出する共感のトポス

Thummb

公益財団法人 神戸学生青年センター館長

飛田雄一


私の職場は、公益財団法人神戸学生青年センター。阪急六甲より徒歩3分の交通至便のところに位置する。1955年にアメリカ南長老教会が設立した六甲キリスト教学生センターが出発点だ。建物の老朽化問題を抱えていたが、共同運営していた長老教会の宣教師と日本基督教団の牧師たちとが相談して、キリスト教の看板を少し横において新しい市民活動センターを作ることになったのだ。1972年に現在の建物が建てられ、翌年1月に登記が完了している。

最初の冊子には「自由な生の営みを願うものは、何ものからも干渉されることのない場所を獲得したいと願います。私たちのセンターは、そうした願いを実現しようとする一つのアプローチです。この園に市民共同体や文化や宗教の営みが花開くことを願っています」とある。

そしてこの「場所」をフルに活用して、平和・人権・環境・アジアをキーワードにセミナーを開いたり、宿泊施設・貸会議室を運営したりしている。セミナーのテーマは、食品公害、朝鮮史・朝鮮語、近代日本とキリスト教などだ。また映画会、音楽会、フィールドワークなどの企画が持ちこまれれば、すぐに共同企画のセミナーになったりもする。

私は、1978年からのスタッフだ。センターを設立した牧師たちは先輩であったが、同時にベ平連の仲間でもあった。実は学生時代にすでに朝鮮史セミナーの常連でもあったし、アルバイトをさせてもらっていたので、それ以前から大きな顔をしてセンターに出入りもしていたのである。

1991年には3代目の館長となった。初代、2代の館長は牧師であったが、私は初めての信徒の館長となった。これで私以降の館長も牧師でなくてもOKということになるはずだ。

センターにとっても1995年の阪神淡路大震災は大きな出来事だった。「神戸ではその地震以降の一年間に10年間分ぐらいの新しい人と出会った」とよく言われるが、私もそうだった。救援物資をもって訪ねて来てくれた友人も多かったが、それ以上に、様々な被災地での支援活動で神戸地域の、更に全国の、更に海外の方々と出会った。

当時センターは、被災留学生専門の避難所となった。42名収容の宿泊室をもつセンターは、避難所としては最高だ。4月末ごろまで韓国、中国、フィリピンの留学生が共同生活をした。自主管理ができていて、例えば中国から留学生家族が戻ってきて部屋数が足らなくなれば、リーダーが、寝袋をもって大学の研究室に移動する留学生を指定したりもしていた。給水車が来たとの情報がはいれば、残しておいた水を使って一斉にトイレ掃除をしてから、空になったポリタンクをもって給水車の列に並んだこともあった。

センターに避難してきた韓国人留学生のアイデアで「とりあえずの3万円」も始まった。彼は、日本人学生がみなお金持ちだとは言わないが、留学生のほうが経済的にはより大変だと言っていた。当時、再開したスーパーで一番人気のあったのが携帯用ガスコンロだが、その4~5千円程度でも買うか買うまいか、ちょっと考えるというのである。そこで、全壊半壊の被災証明書を持参した留学生には、その場で3万円を支給することにした。もちろん支給だから、返済の必要はない。当初は募金より支給のスピードが速く、資金が足りずに建て替え払いをする時期もあったが、最終的にはすべて募金でまかなわれた。総計で767名、2301万円であった。

その支給が一段落したころに、日本DEC(コンピュータ会社)から電話があった。「当社はアジア市場で仕事をしており、震災時、社員を大阪のホテルに住まわせて仕事を継続した。震災で外国人を一番支援したのはお宅の学生センターのようだ。ホテル滞在が終わったので寄付をしたい。社長が贈呈にいく」とのことだった。忙しいだろうから銀行振込でいいのになどと思ったが、わざわざ来られた。寄付は1000万円だった。「とりあえずの3万円」は既に終了していると言うと、使い道はおまかせしますとのことだった。その会社は寄付のことをマスコミに発表せず、社内報に贈呈式のことを書いただけだった。その寄付金と支援の残金300万円とをあわせて1300万円の六甲奨学基金がスタートし、現在まで続いている。今年度は、7名の留学生に月額5万円の奨学金を支給している。基金の残高が減ったのでスタートさせた古本市も、年々規模を拡大し2か月間で400万円も売り上げる大イベントとなっている。

学生センターには様々なテーマが持ち込まれて活動が展開されている。例えば、強制動員真相究明ネットワーク、神戸・南京をむすぶ会、SCM(学生キリスト教運動)協力委員会、神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会などの事務局も、センターにある。

センターで、人と人、人とテーマ、テーマとテーマが出会っている。それはとても嬉しく、誇らしいことだと思っている。

飛田雄一 ひだ ゆういち

公益財団法人 神戸学生青年センター館長、強制動員真相究明ネットワーク共同代表など。

著書に、『現場を歩く 現場を綴る―日本・コリア・キリスト教―』(かんよう出版 2016.6 )、『心に刻み、石に刻む―在日コリアンと私』(三一書房 2016.11 )、『旅行作家な気分―コリア・中国から中央アジアへの旅―』(合同出版 2017.1 )